あの頃の夢を、叶えてあげる

エッセイ書きたかったんだった。ずっと忘れてた。

面白くないはずのトランプ遊びの行方


 彼女は結局、トランプ遊びを選択した。

 ここに2泊滞在した私が帰路につくまでの残り1時間を、兄と妹それぞれがやりたいことを選んで30分ずつ遊ぶことにした。小学2年生の兄はバスケをすると即決し、妹に先を譲ったのだった。

 たった2日前に初めて会ったとは思えない、何年も前から互いに知っているようなこなれた空気感で、私たち3人は机を囲んだ。

 

 

 彼女はいつものように元気いっぱいでその場を仕切りだし、スーパー柔らかい頭ですぐにオリジナルのゲームを提案した。
 裏面のまま絵柄が見えないように、彼女が1枚ずつ札を送っていく。私が好きなタイミングでストップをかけて、その札が”Q(数字の12)”だったら当たりだと彼女は言った。非常にシンプルな当てっこである。

 「えーーー、そんな簡単に”Q”が出るわけないじゃん!」

と、私は大きくリアクションをする。確率を考えたら当然である。だがそれほど深く考えず、まあ面白くても面白くなくても別にいいかとあっさりその提案に乗り、ゲームは始まった。

 

 特別なことは何もなく、いつごろどのようにストップをかけたのかも全く覚えていない。1ミリも当たるなんて期待していなかった。出た札は…まさかのQueenだった。

 「え… え⁈ え⁈ 」

 私は心底驚き、激しく動揺した。あまりに予想外すぎて喜びが湧いてくるどころではなく、ただただオロオロしていた。2人のリアクションを見る余裕もなかったが、おそらく驚いていたと思う。

 「うそでしょ…すごくない…⁇」

 狼狽しながらも自分がミラクルを起こした実感を持ち始めたが、まあ言うても、これはまぐれであろう。そう思いながら、ある意味完全に無心だった1回目よりもさらに下がった期待値で、我々はもう1度同じようにトライした。

 今度は”Q”ではなかったが、数字の”9”が出た。微妙に空気が止まり、私のつぶやきが漏れる。

 「え、これ… "Q”ではないけどさ、なんか…」

 「これ("9”)もOKにしよう!」

と彼女がカラッと明るく言う。

 

 この後も同じことを何度も繰り返し、私は早いタイミングで止めてみたり、相当長く粘ってみたりと、いろいろ緩急をつけながらやってみた。100%すべてではないが、ほとんどと言っても過言ではないぐらいに多くの回で、"Q"か”9"が出た。

 みんな動揺と、うっすらとした興奮でざわついていた。
 これは一体、何?エスパー?

 当てる私がすごいのか、それとも彼女が何かを操っていてすごいのか、それとも2人ともすごいのか。
 はたまた、この2人の組み合わせだから、ミラクルが起きているのか。

 

 そんなことを私が口走っていたら、側ですべてを一緒に見ていた兄が言った。

 「この子(妹)、昔からそういうところあるんだよね」

 

 

 終了時間が間近になり、いよいよラストの1回である。

 出たのは… やっぱりQueen

 

 

 「絶対面白くないって思ったのに、すごく面白かったね」

と、兄が言った。まったくその通りである。

 今後彼女とは長い付き合いになりそうだ、と私は確信を持って思った。