あの頃の夢を、叶えてあげる

エッセイ書きたかったんだった。ずっと忘れてた。

ダンデライオンが見せた不思議体験


 地元に帰ったときに、よく遊びに行く山があるんです。父親に連れてってもらうお馴染みの場所なんですけど、いい空気の中でリフレッシュして、だんだん素の自分に戻っていくような、いいところです。

 

 その日は、初めて歩く道を一人で散策していました。予想以上に長い坂道をガッツリ登って、それから下って。ようやくひらけた大通りに出ると、そこには…

 

 一面に咲く たんぽぽの花。

 草むらいっぱいに、道沿いにずーっと咲き続けていたんです。


 もうびっくりするぐらい、すっごくきれいで、「わぁぁ〜〜〜」って感激して。そのとき、BUMP OF CHICKENの「ダンデライオン」っていう曲のことが浮かんできたんです。まさにこの曲とリンクする景色!!

 前からよく知っている大好きな曲なので、軽くそらで口ずさみながら道沿いを歩き出したら、「あれ?」って。

 体の奥から何かが溢れるように、ボロボロ涙が出てきて。


 突然パッと、はじめて、身に迫るようなリアリティを持った体感として、この曲の内容が広がって…知ってるとか理解してるとか感動とか、そういう次元じゃないんです。そういうのをはるかに超えた「物語の真の実感」みたいなものが、直接身体にスッと染み渡っていくような感じでした。

 嫌われ者のライオンのさみしさ。一輪のたんぽぽの姿、あたたかい友情。絶望的な状況。心静かな時空を超えた思い。それらをすべて包み込むように谷底いちめんに咲くたんぽぽ。

 

 それらは本当に鮮やかで、じっくり大事に味わいながら、ボロボロ泣き続けながら、その道沿いを延々(けっこう遠かった)歩いて帰っていったのでした。


 こういうことって、やろうとしてできるものじゃない。

 たとえば私がこの曲を演奏する機会があって理解を深める必要があったとしても、なかなか努力であの境地にたどり着くことはきっとできないと思います。

 

 あれはなんだったんだろう?っていうような不思議体験。ふとぽっかり空いたスペースに、何かが飛び込んできたみたいな。いくつかの難しい条件が揃って、一度きりしか発生しないRPGのイベントのような。

 

 そんな出来事が時々起こるのが面白いなって思います。